03 困難の中にチャンスを見出す突破力 名古屋支店 岐阜営業所

  • 名古屋支店 岐阜営業所 所長

    中谷 広美

コロナ禍において輸送は世界的に混乱した。荷役作業員不足によって荷揚げは滞り、ターミナル港には沖待ちで身動きの取れない輸送船がひしめき、物資の不足、資材未着による製造の遅滞、納期遅れなどが発生した。この逆境下で顧客のピンチを打開することでつかんだプロジェクトがある。国境を越えて広がる混乱の中から成功をつかみ取ったカギは何か? プロジェクトを率いた中谷の話にその手がかりを探した。

中谷は、航空機を製造する会社の輸送担当である営業所の責任者として、様々な輸送を受け持つ。クライアント企業内に常駐しているため、輸送全般について相談を受けることも多い。

その「案件」はある日突然舞い込んできた。別の専門業者で予定されていたヘリコプター輸送が輸送日前日にキャンセルになったというのだ。ヘリコプターの輸送には、主に自動車専用船が使用されることが多い。しかし、自動車輸送が優先されたため急遽ヘリコプターの積載ができなくなり、専門業者が納期に間に合う代替輸送手段を用意できない事態となったのだ。ヘリコプターのような特殊案件の場合、本来数か月間かけて慎重に輸送計画を練るのが普通だ。しかし、今回はすぐに他の輸送手段を見つけなければ納期に間に合わないばかりか、クライアント企業には金銭的損失に加えて信用の失墜というリスクも降りかかることになる。

ケイラインロジスティックスでは、海外から日本向けにヘリコプターを運んだことはあるが、日本から海外への実績はない。だが、社員同様にクライアント企業へ溶け込んできた中谷には「断る」という選択肢はなかった。とは言え、専門業者が白旗を上げたのには相応の理由があった。まず、輸送するヘリコプターは全長約12m、高さも約4mある中型機で、通常のコンテナなどには入らない。また、納期が差し迫っていることと荷物の安全性を考慮すると、積み替えなしで納品先の近くの港まで航行することが望ましい。過去には、積み替えのために海外の港に一時おかれた貨物が何者かによって損壊される事故も報告されていた。しかし、条件をクリアできる輸送船は見つからず、ヘリコプターをパレットごと積載できる輸送航空機もない。

突破口を開いたのは経験豊富な担当者だった。
「その担当者は鉄鋼などを運搬する在来船での輸送を提案したのです。他社が輸送手段を見つけられない時に、納期に間に合うスケジュールで航行する在来船を見つけ出せたのは、当社の経験値が大きくものを言ったと思います。」
と中谷は語る。

在来船はコンテナ輸送が主流となる以前から使われてきた、クレーン付きの輸送船だ。コンテナに入らない大きなものや特殊な形状の貨物を運ぶことができる。しかし、自動車専用船とは異なり、積載にあたりヘリコプターを梱包する必要があった。この梱包が次の課題となった。
一般公道における自動車の高さ制限は「3.8m」である。特別に許可を受けても高さ4mのヘリを工場で梱包すると制限を超えてしまい、船積みする港までの公道を使って運ぶことができない。
「ヘリコプターはむき出しのまま台車に載せられ、あらかじめ許可証を交付されている陸送業者に運んでもらい、港で梱包しました。梱包業者には出荷前に工場で計測を済ませて、港でスムーズに梱包できるよう、資材を準備してもらいました。」(中谷)

この段取りが功を奏し、2~3日がかりになることもある梱包作業も迅速に進み、2時間程度で作業は完了した。
梱包されたヘリコプターが吊り上げられ、在来船に積み込まれるのを見届けた時、中谷にはこみ上げるものがあったという。船は予定通り出航・航行し、クライアントのヘリコプターは無事納期内に届けられた。

「他社が行き詰まった案件をクリアできたのは、当社の経験値、企業力と関連会社との信頼関係があってこそ。情報がすぐ手に入る現代においても、経験や信頼は地道に積み上げるしかないものです。」(中谷)
困難な条件下でも様々な方向から攻め、打開策を見出す経験値と企業力はケイラインロジスティックスの強みだ。

瀬戸際でクライアントの信頼を得た実績が評価され、次の輸送にかかわる商談もスタートした。
「一筋縄ではいかない案件ほど燃えますね。広い視野を持ち、常に先を見据えながら冷静に対応するよう心がけています。そして、どんな状況でも頼られるエキスパートとして、お客様の信頼を得続けられるよう、努めていきたいと思っています。」という中谷。

ドラマにはまだ続きがありそうだ。

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