クライアントを襲った突然の危機

コロナ禍において輸送は世界的に混乱した。荷役作業員不足によって荷揚げは滞り、ターミナル港には沖待ちで身動きの取れない輸送船がひしめき、物資の不足、資材未着による製造の遅滞、納期遅れなどが発生した。この逆境下で顧客のピンチを打開することでつかんだプロジェクトがある。国境を越えて広がる混乱の中から成功をつかみ取ったカギは何か? プロジェクトを率いた中谷の話にその手がかりを探した。
中谷は、航空機を製造する会社の輸送担当である営業所の責任者として、様々な輸送を受け持つ。クライアント企業内に常駐しているため、輸送全般について相談を受けることも多い。

その「案件」はある日突然舞い込んできた。別の専門業者で予定されていたヘリコプター輸送が輸送日前日にキャンセルになったというのだ。ヘリコプターの輸送には、主に自動車専用船が使用されることが多い。しかし、自動車輸送が優先されたため急遽ヘリコプターの積載ができなくなり、専門業者が納期に間に合う代替輸送手段を用意できない事態となったのだ。ヘリコプターのような特殊案件の場合、本来数か月間かけて慎重に輸送計画を練るのが普通だ。しかし、今回はすぐに他の輸送手段を見つけなければ納期に間に合わないばかりか、クライアント企業には金銭的損失に加えて信用の失墜というリスクも降りかかることになる。